7月の聖悟 ─弘法大師の教え─ |
06:06 |
「示す者なき時は、すなわち目前なれども見えず。説く者なき時は、すなわち心中なれども知らず」 ─弘法大師─
(明らかに示す者がいなければ、永遠不変の真理は目の前にあっても見えず、説く者がいなければ永遠不変の真理は、心の中にあってすら知られない)
仏法は永遠の真実を明らかにする真理を説いていますが、無明という根源的な無知と、煩悩という根源的な穢れを抱えている私たちは、なかなか理解できません。
それは、あたかも、人間やネコなど地上に生きる生きものが海中の様子を知らず、クジラやマグロなど海中に生きる生きものが地上の様子を知らないようなものです。
しかし、無明・煩悩を克服して覚りを開いた存在である仏陀(ブッダ…覚者ともいいます)は、両方の世界を知っておられます。
智慧を獲得し、無垢の存在となったからです。
そのような存在から観れば、迷いの世界しか知らず、そこが同時に覚りの世界でもあることに気づかない私たち凡夫は、いかに哀れなことでしょうか。
救わずにはいられないという慈悲が湧いてくるのは当然でありましょう。
最近の科学が明らかにしつつある色と脳の関係も、この教えを理解するための参考になります。
光にはさまざまな波長があり、人間は人間なりに持っている脳のはたらきによって三原色を基本にした色の認識をしていますが、イヌやネコの脳は人間とは異なったはたらきを持っているので、白黒か、それに近い色の判別しかできないとされています。
仏陀はすべての色を認識できる能力を持っておられると想像すれば、人間との違いが実感できます。
いずれにしても、人類は、覚者に導かれつつ、破滅をせずにここまで来ました。
人間であれ国家であれ、おのおのが好き勝手にやりながらなお、全体が滅びないで済んだのは、全体を壊滅させるほど悪業が積まれていなかったからでしょう。
しかし、今は違います。
アメリカを筆頭として、地球を何度でも破壊し尽くすだけの原爆が蓄えられ、このまま行けば遠からず生態系を破壊し尽くすほど環境汚染は進みました。
また、ほとんど指摘されていませんが、性悪説が広がりつつあることも、人類の危機を増大しています。
一番解りやすい例が、最近、盛んに行われるようになった「先制攻撃の正当化」という考え方です。
北朝鮮が日本に向けてミサイルを発射しようとしているならば、発射される前に日本からミサイルを発射して北朝鮮のミサイルを破壊しても良いのではないかという主張です。
一見、もっともですが、この思想には重大な危険性が潜んでいます。
やられると思ったなら先に相手をやっつけても良いとなれば、対立関係が発生した場合、先制攻撃をした側が必ず正当性を主張するに違いなく、戦争になってしまえば、正当性も何もかもが意味を失ってしまうからです。
高邁な理想を掲げて太平洋戦争まで突き進んだ日本が、負けた結果、東京裁判という無法な裁判で死罪に値する極悪人に導かれた国と決めつけられ、今は、東京裁判の正当性が世界中から否定され(最高司令官マッカーサーが誤りだったと認めています)つつあります。
戦争と荒廃という恐ろしい事実・現実の前には、正当性の主張などほとんど無意味です。
恐れ、戦い、狂い、殺し、殺された後で、いったい、いかなる観念が救いになりましょうか。
絶対に戦争を起こさないという覚悟を突き崩す最後の斧が性悪説であり、恐怖であることをしっかり認識しておきたいものです。
覚者は、覚りの世界の様相を説き、覚りの世界を感得して迷いの世界を脱する方法を説きます。
この道筋は、性悪説とはまったく無縁です。
なぜなら、不安や怒りや恐怖をもたらし、我をはってお互いを傷つけ合う悪事に走らせる無明も煩悩も実体はなく、幻に過ぎないからです。
幻を幻であるとしっかり観る眼を持てと説く覚者の教えこそが、人類を危機に陥れつつある性悪説を克服し、原爆も、戦争も、環境破壊もなくすための方法です。
お大師様の教えどおり、〈示す者〉や〈説く者〉を信じ、導かれつつ霊性を高めたいものです。
(ただし、〈示す者〉や〈説く者〉が本ものか偽ものかを見分けることが大前提ではあります)
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今月の守本尊様・真言・聖語 | - | - | posted by
住職 遠藤龍地